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OKRとは?意味やメリット、KPI・MBOとの違いを解説

働き方改革の活性化やリモートワークの普及により、現在注目されている目標管理手法であるOKR。インテルで生み出されたこの手法は、GoogleやFacebookなどの海外の大企業でも採用されています。
ここ最近では、日本でもOKRへの注目度が高まり、メルカリなどの日本企業でも導入されています。
この記事では、OKRの意味やメリット、導入方法などを、初心者のためにわかりやすく解説します。

OKRとは?

OKRとは、”Objective and Key Results”の略称で、”目標と主要な結果”のことです。
OKRは、企業やチーム、個人といった異なる階層で設定されます。
OKRで設定する目標(Objective)とは、ビジョン実現につながる達成困難な定性的な目標です。OKRの目標は、チャレンジングなものが設定されるべきで、現在の業務の延長線上から導き出されるものではありません。
一方で、OKRの主要な結果(Key Results)とは、その目標の達成度の尺度と基準を定量的な指標・数値で示すものです。
OKRでは達成困難な目標を設定するため、一般的に、達成率は60%〜70%で成功とみなします。

OKRとその他の類似用語との違い

近年、日本でも導入され始めているOKRですが、KPIやMBOなどの似た手法との違いはご存じですか?
ここでは、OKRと混同されやすいKPI・MBOとの違いを解説します。

OKRとKPIの違い

OKRと混同されやすいものにKPIがあります。
KPIとは、”Key Performance Indicators”の略称で、”重要業績評価指標”のことです。
私たちは、KPIを「対象となる事業活動において、定めた目標の達成度合いや、その達成に向けた主要な活動の進捗状態をはかるための定量的な指標」であると定義しています。
KPIでは、現実的に達成可能な目標を設定し、その目標を100%達成することを目指します。一方で、OKRでは、チャレンジングな目標を設定し、達成率が60%〜70%でも成功とみなす点が大きな違いです。

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OKRとMBOの違い

KPIと同様に、OKRと混同されやすいものにMBOがあります。
MBOとは、”Management By Objectives”の略称で、”目標管理制度”のことです。
MBOは、「経営学の父」ピーター・ドラッガーが、1954年に著書の中で提唱したもので、現在でも広く企業に普及している組織マネジメントの方法論です。
MBOでは、各個人が目標を掲げることになり、大きな事業戦略を意識した個人の能力開発に焦点を当てます。
また、MBOは報酬の決定にも使用され、評価制度としての側面も強くあります。一方で、OKRは報酬の決定には使用されないのが大きな違いです。

OKR導入の3つのメリット

ここでは、OKRを導入するメリットを3つ紹介します。

OKR導入のメリット1:社員が会社の目標を理解しやすい

OKRでは、企業の目標と個人の目標がつながります。そのため、企業のビジョンや目指すものが社員や組織内に深く浸透します。
このように社内で全社的な目標がしっかりと理解されていると、社員一人ひとりの行動が会社の向かうべき方向に向くようになります。

OKR導入のメリット2:社内コミュニケーションの活性化

OKRでは、上司と部下などの社員同士で定期的に進捗状況を話し合います。これは、厳しく進捗管理をするためというよりも、目標にしっかりとフォーカスできているかを確認するために行うものです。これにより、フランクにミーティングを行う機会が増え、社内コミュニケーションの活性化につながります。
このように、OKRには、社内コミュニケーションを活性化するコミュニケーションツールとしての側面もあります。

OKR導入のメリット3:組織への帰属意識の向上

組織への帰属意識を高められることも、OKRの代表的なメリットとして知られています。
企業の定める目標を従業員の成果とリンクさせることにより、組織が一体となって同じ方向に向かって進んでいけるからです。
OKRが定着することで、従業員一人ひとりに企業を支えているという自負と愛着心を持たせられます。

OKR導入の2つのポイント

ここでは、OKR導入時のポイントを2つ紹介します。

OKR導入のポイント1:OKRの達成率と評価は切り離す

OKRでは、目標の達成率と人事評価を直結させるべきではありません。
OKRの達成率と人事評価を直結させると、多くの従業員が達成しやすい保守的な目標を設定してしまいがちです。
OKRでは、チャレンジングな目標を設定することで、従業員の成長を促します。しかし、保守的な目標ばかりを設定していたのでは、OKRの目的である従業員の成長にはつながりません。
OKR導入を成功させるためには、OKRの達成率と人事評価や報酬の決定は切り離すようにしましょう。

OKR導入のポイント2:定期的にレビューする

OKRでは、企業の方向性を指し示す目標を定めるため、OKRを導入することで無駄の少ない事業展開ができるようになります。
ただし、それはあくまでも自社の特徴を踏まえて正しく運用できた場合の話です。評判どおりの効果を発揮させたいなら、スタート後に定期的にレビューすることを忘れてはいけません。
OKRは従業員の自主性に依存する部分もあるため、少なくとも3カ月に1回の頻度で、問題がないか振り返るようにするのが得策です。
導入して成功している企業の中には、上司が部下と気軽に話せる環境づくりに注力しているところも少なくありません。

簡単3ステップ!OKR導入手順


ここでは、OKR導入の具体的な手順を解説します。

OKR導入手順1:会社のOKRを設定する


まずは、会社全体の四半期のOKRを設定します。
会社のOKRは、会社のミッションとビジョンに基づいて設定する必要があります。
会社のチャレンジングな目標は多くても5個までとし、目標に対する成果指標もそれぞれ3個程度にするのが適切です。あまり数が多くなってしまうと、それぞれの目標や成果指標を追えなくなってしまいます。
会社全体・社員全員が共感し、ワクワクするようなOKRを設定しましょう。

OKR導入手順2:部門・チームのOKRを設定する


次に、部門やチームのOKRを設定します。
部門・チームの目標は、手順1で設定した会社のOKRのKRを満たすものを設定します。部門・チームのOKRを設定する際には、会社全体や他部門のOKRも確認して、整合性が取れたものにするようにしてください。
ここでは、部門・チームとしての成長に役立つOKRをいくつか選択するようにしましょう。

OKR導入手順3:個人のOKRを設定する


そして、個人のOKRを設定します。
ここでは、社員一人ひとりが個別にOKRを設定します。個人の目標は、部門・チームで定めたKRを満たす内容に設定します。関係各位と積極的に情報交換をして、整合性を取りながらOKRを設定する必要があります。
会社全体のOKRを意識して個人のOKRを設定することで、会社の目指す方向と自分の行動のつながりを理解することに役立つでしょう。

OKR導入の成功事例

本記事では、OKRの基本から導入方法まで解説してきました。
ここでは、OKRの理解をより深めていただくために、OKRを実際に導入した企業の成功事例を紹介します。

OKR導入の成功事例1:Google

Googleでは、2000年代のはじめにOKRを導入しました。
現在では、1年単位と四半期単位でOKRを設定し、四半期に1回の全社ミーティングでOKRの公開と評価を行なっています。
Googleでは、「ストレッチゴール」と呼ばれる、自身が可能と考える設定値より高い、チャレンジングな目標を設定します。このOKRは、70%達成できれば成功と言えるようなもので、すべてのOKRを達成することは驚異的な成果とみなされます。
目標は3~5個に絞り、1つの目標につき、成果指標を3個ほど設定します。
組織のOKRは、1年ごとと四半期ごとに評価して共有するのが慣例になっていますが、四半期中にもOKRを検証し、個人とチームの現状を常に把握しています。
Googleでは、企業戦略の設定にもOKRを活用しており、GoogleのOKRは企業目標の一部です。
世界で最も価値のあるブランドの一つにまで上り詰めたGoogleの大躍進に、OKRが一役買ったことは間違いなさそうです。

〈参考記事〉OKRを設定する

OKR導入の成功事例2:メルカリ

フリマアプリ「メルカリ」を提供する株式会社メルカリは、2015年、設立したての従業員が100人以下のころにOKRを導入しました。
OKR導入当初は、日本にほとんどOKRの情報がなかったため、英語の文献をあたって調査を行ないました。まだ、日本では名前すら聞かない中で導入を始めた、まさに日本におけるOKRのパイオニアと言える存在です。
メルカリでは、独自の人事管理システムを構築し、そこにOKRを入力することで、個人レベルまでOKRを共有しています。
四半期ごとにOKRの進捗を評価して、次のOKRを設定するというサイクルを導入当初からずっと続けています。
メルカリでは、OKRを導入したことで、下記のような効果・メリットがありました。
・会社のフェーズがメッセージとして伝わりやすい
・チャレンジングなカルチャーが生まれる
・横同士の支援が生まれやすい環境
メルカリの大躍進はみなさんの知るところだと思いますが、OKRがメルカリの成長を支えたと言えそうです。

〈参考記事〉OKRのリアルなハナシ 〜(株)メルカリの場合〜

まとめ

この記事では、OKRの意味やKPI・MBOとの違いから、OKR導入手順や成功事例まで解説しました。
OKRと同様に多くの企業に導入されているのがKPIマネジメントです。本記事内でも解説しましたが、OKRでは達成率が60%〜70%で成功とみなされるようなチャレンジングな目標を設定します。一方で、KPIでは目標を100%達成することを目指します。そういう意味では、OKRよりもKPIマネジメントの方が日本企業にはなじみやすいかもしれません。
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