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〈HR RUNNERS vol.2〉企業カルチャーの創造

ーーWithコロナ時代に入った今求められる「企業カルチャー」とは。

HRの前線を走る第一人者からお話を伺う対談イベント「HR RUNNERS」。第2回である今回のテーマは、「企業カルチャーの創造」。Withコロナ時代に入った今、在宅ワークによる組織の一員としての自覚の低下や、新入社員の企業カルチャーとの接点の減少への対応などが問題視され始めています。
カルチャーを浸透させる表彰制度、対話の重要性、Withコロナ時代の取り組みなどについて、オイシックス・ラ・大地株式会社の三浦さんからお話を伺いました。
※本対談記事は、8月28日に開催したオンライントークライブより編集したものです。

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Profile
三浦孝文 氏
オイシックス・ラ・大地株式会社 HR本部 人材企画室 室長
カラビナテクノロジー株式会社 People’s Adviser/株式会社リクメディア 顧問
大分県出身。関西学院大学を卒業後、株式会社D2Cで採用全般、Cookpad株式会社で採用と子会社人事機能立ち上げを経験後、現職。社外ではBusiness Insider Japan主催「Game Changer 2019 Leadership」部門グランプリ受賞。2020年度はADVISORY BOARDに就任。adtechtokyo2020公式スピーカー、1,700名を超える事業会社人事が集まるコミュニティ「人事ごった煮会」発起人を務める。さとなおオープンラボ7期生。

〈聞き手〉
楠本和矢

HR Design Lab.代表博報堂コンサルティング 執行役員
神戸大学経営学部卒。丸紅株式会社で、新規事業開発業務を担当。外資系ブランドコンサルティング会社を経て現職。これまでコンサルティングプロジェクトの統括として、クライアント企業に深くコミットするアプローチのもと、多岐にわたるプロジェクトを担当。現在は、HR Design Lab.代表として、「マーケティングとHR領域の融合」をテーマに、現場での実践に基づいた様々なHRソリューションを開発提供。特に、組織の創発力強化・生産性向上を目的とした取組みに注力。

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対話を通して行動規範を定める

楠本:本日は、オイシックス・ラ・大地の三浦様をゲストにお呼びしました。今回は、「企業カルチャー」の重要性についてのお話をお伺いしたいと思います。先ず、御社にとっての「企業カルチャー」とは何か、また、掲げられている企業理念とは位置付けが異なるものなのか、こちらから伺って参りましょう。

三浦さん(以下、敬称略):当社の企業理念は「これからの食卓、これからの畑」と定めており、食卓と畑をつなげていくことを大事にしている会社です。その中で、自社の社員がどういった行動を通して企業理念を体現すればいいのか、「企業カルチャー」を「ORDIsm(7つの行動規範)」という形で定めています。

楠本:なるほど。その7つの行動規範は、どのようなプロセスで作られたのでしょう?

三浦:この行動規範を作るプロセスにおいて、経営統合を直近の3年間で2回経験しています。その中で、各企業の出身者がプロジェクトという形で集まり、それぞれが大事にしてきた行動規範を持ち寄り、対話を通して新しい会社が目指す行動規範を定めていきました。各社、それぞれが大事にしてきた文化や規範がありましたし、社員の年代やバックグラウンドなどが各社各様だったので、そのすり合わせをするのは簡単な作業ではありませんでした。
例えば、Oisixは平均年齢が30代前半でお客様起点で立ち上がっている会社ですが、大地を守る会は平均年齢が40代前半で生産者をを買い支えるという視点で立ち上がった会社でした。食卓と畑をつなぐ、という新たな方向性を定める中でも、出自が違うので、いかに対話を重ねながらお互いの距離を縮めるかというのが課題でした。

楠本:お互いの理解を深めるためには、やはり対話は基本なのでしょう。しかし「では、対話を始めてください」と言っても簡単にできることではないですよね。文化が違ければ尚更です。「対話」を効果的に進めるために、どのような工夫をされたのでしょうか。

三浦:最初からうまくいった訳ではありません。やりながら工夫をして、アップデートしました。対話の機会を作るために、全社員が集まる社員総会を1時間、毎月2回行っていました。その中で、各社出身のメンバー3〜4人を混ぜてグループを作ってワークショップを行い、行動規範について話してもらいました。その際には、フリーフォーマットで行うのではなく、全体司会やリーダーを決めて、ゴールをイメージしてプロセスを区切るようにしていました。また、これは1回で終わりではなく、定期的に行うようにしていました。

楠本:やはり、事前の「設計」がポイントになりますか。

三浦:ワークショップは事前に綿密に設計していましたし、その後、社員や経営からの声を聞いて、次回のワークショップにそれを反映する、という形で、設計はかなりアップデートを重ねていました。
「何について話すのか」はこちらが決め、お互いのことをただ話すのではなく、ゴールに向けてお互いが話していくようにワークショップを設計していました。これを重ねていくことにより、「話ことが当たり前の文化」になっていきました。

 

カルチャーを浸透させる表彰制度

楠本:素晴らしいです。では次に、そうやって作られたカルチャーや行動規範を浸透させるために、どの様な取組を進められたのでしょうか。

三浦:表彰の仕組みを導入したことがポイントとなります。7つの行動規範の中でも、「今期、注力する行動規範はこれ」というものを定めて、毎週1回行っていた朝礼の場で代表の高島が3〜4組を表彰していました。現在のコロナ禍でも、オンラインでほぼ毎週表彰をおこなっています。

楠本:7つの行動規範の全てはなく、絞って浸透させたというのは興味深いです。

三浦:いきなり7つ全部やってくれと言われても難しいと思いますので、会社の中期計画を達成するために、戦略に合わせて経営が、「今期は特にこれに注力していこう」という行動規範を定め、2つくらいに絞り込んで説明していました。

楠本:表彰を毎週やっているというのもすごいですね。そこまで徹底しているケースはあまり聞いたことがありません。一つ伺いことは、どのように表彰する人を選ぶのか、ということです。仕組みがしっかりしていないと、逆に不公平になってしまいますよね。

三浦:我々は食品小売業ということもあり、数字の定量目標やKPIは、毎週・毎月といった単位で社内で公開しています。表彰に自発的に推薦してくれる事業部もあればそうでない事業部もあるため、HRの担当者が、目標を達成している各事業部のマネジャーなどに、「目標を達成していますが、何か行動規範を体現した活動はありませんか?」といった具合でヒアリングをしに行きます。

楠本:推薦されている人だけでなく、推薦されていない人についてまで、事業部に入り込んでヒアリングをしに行く、というのはすごいですね。

三浦:推薦された人についてファクトをチェックして経営に上げるのはもちろんのこと、推薦されていない人についても、表彰すべき人がいないか拾いに行く、というのは今でも毎週やっています。まだまだ足りないと思いますが、そこで現場の人との対話が起こるので、そこはしっかりと継続しています。もちろん、社員の人がもっと自然に推薦を上げたくなる雰囲気づくりも大切で、ここはまだまだ課題です。こういう表彰での取り組みが人事のその他の施策にも繋がっていきます。評価などは当然ありますが、採用やオンボーディング、成長支援にもつながっていきます。現場にいけばいくほど、まだまだ足りてないことを実感します。

楠本:「表彰」の取組については専任の方がいらっしゃるんですか?

三浦:はい、専任がいます。ただ、当社では、HRでもプロジェクト型で動くことが多いので、表彰が主としての役割だとしても、それぞれの仕事はつながっているので、あまり固定化し過ぎずフレキシブルに仕事をしています。つい最近も、採用の活動に従事してくれていたメンバーに表彰や社員にとっての活躍環境の進化のプロジェクトに入ってもらいました。

楠本:御社の取り組みは本当に参考になることばかりです。そのようなきめ細やかな対応を行うと、そのトレードオフとして「手間」もかかりますよね。

三浦:確かにものすごく手間はかかりますが、人事は現場との対話をおろそかにしてはならない、と痛感しています。ただリソースの分配に関しても、今期やるべきものを話し合って、例えば、採用チームの今の活動が教育チームの活動に比べてプライオリティが低ければ、採用チームのリソースの半分を成長支援のチームに使う、というようなこともしています。

 

どのように「表彰」するのか

楠本:先程話題に出た「表彰」についてもう少し伺います。表彰といっても、単に「表彰状」を渡すことではないと思いますが、貴社ではどのような工夫をされていますか。

三浦:当社の代表である高島が自ら、朝礼の場で呼び込みをします。表彰されたメンバーは登壇し、表彰された理由をHRから簡単に説明するとともに、どういった工夫をしたのかなど、本人に1〜2分間話してもらっています。話をしてもらうことにより、表彰された本人の振り返りになり再現性を持つことができるとともに、それを聞く周りの人たちもどういった行動が結果につながるかがわかり、その後のアクションにつながります。事前に、HRから表彰受賞メンバーへコミュニケーションしていて、ポイントを話せるように心構えもしてもらっています。

また、表彰後に社内報などにもその内容が載るので、それについて質問をしたり、他ブランドがそのまま真似をしたり、といったコミュニケーションが起こるように設計しています。

楠本:素敵です。ちなみに表彰をしようとしても、盛り上がらなかったり、強制感が出てしまったりしてしまう、というお悩みを抱える企業も多いのですが、常に新鮮さを保つための工夫として、どんなことに取り組まれていますか。

三浦:確かにマンネリ化してしまいがちですので、常に変えていく、新しいことにトライしていろんな人を巻き込んで変化をつける、ということは大事にしています。従来は、表彰についてはメールやポスター、社内報で告知する程度だったのですが、今後は社内YouTuber的に表彰を認知させるための動画を出してみたり、前回表彰された人や経営などを出演してもらい対談してもらったり、いろいろなことを考えています。表彰とは体現者を増やしてたたえ、次の事業やサービスを生み出す人を後押しする場なので、その目的さえブレなければ何にトライしても良いのではないかと思います。

楠本:有り難うございます。確かに、方法が決まっている訳ではありませんもんね。表彰制度をもっと自由に考えてみると、その会社らしい取組に進化する可能性がありそうです。
今までにご説明いただいた文化を定着させるための活動で養われるスキルが、仕事の仕方やお客さんとのやりとりなど、実業にも波及していると感じることはありますか?

三浦:明確にあります。表彰された人の事例を見て、「自分もこういう風に挑戦してみよう」などと実際にアクションを起こす人が出てきます。そして、その繰り返しで体現者がどんどん増えていきます。

楠本:「成功事例を共有しよう!」というナレッジ・シェアやナレッジ・マネジメントなどはお堅くなりがちですが、カルチャーでナレッジが広がっていくというのは自然でいいですね。今まで、障壁や大変だったこともあったと思います。

三浦:いかに社員が自発的に文化を体現してくれたり推薦をしてくれたりするか、というのは今でも試行錯誤しています。よく推薦をあげてくれる人などは、ある程度、固定化されてしまうところがあります。そういうところを、推薦を待つだけでなく、現場に対して「表彰に値する行動はなかったか?」と掘り下げに行きます。掘り下げに行く必要があるということは、良い循環に100%なっている訳ではない、ということなので、サイクルをもっと自然に大きく回していく必要があると感じています。

 

Withコロナ時代に必要な、カルチャー浸透の工夫とは

楠本:コロナ禍で在宅ワークが中心になり、一人ひとりがリアルに話す場面が少なくなっているかと思います。そういった中でカルチャーの浸透に必要な工夫とは何でしょうか。

三浦:在宅ワークが中心になると、仕事の目的ありきで、会う人が固定化されてしまいます。そこで、チーム外の人との関係性をどう作るかが問題となります。当社では、四半期に1回ほどの頻度で社員同士の交流会の費用を支援しています。今だとオンラインの飲み会やランチ交流会も支援の対象です。ただの交流会ではなく、「どういう目的で集まるかは大事にしてください」と伝えています。「育休復帰明けのママさん」や「入社半年以内の人」などのテーマを持って開催してもらい、タテ・ヨコ・ナナメの「ナナメの関係」を意図的に作りやすいように支援しています。そうするといろんな部門の人が集まるので、テーマの共通項の中で交流が生まれて、持ち帰れるものがあります。本人たちが自主的に立ち上げるものや会社が箱を作るもの、サークル活動など、さまざまな集まりがあります。

楠本:飲み会も「目的ありき」である、ということですね。目的がある方が集まりやすいですよね。
御社では、社員からいろんなものを引き出そうとしているように感じます。あまり仕掛けてしまうと管理指向になってしまいますが、多様性も重んじていて、自由と仕掛け方のバランスが絶妙だと感じました。

三浦:「意図して明確にやっているもの」「少し緩めのもの」「目的なしのもの」など、フェーズによっていろいろとあります。新入社員には「ナナメの関係を作る」などの目的を持って設計しますが、何年も働いている人にはもっと違う角度が必要だと思います。
人によって施策は変わりますので、それは人事が考えていくべきことだと感じています。

楠本:現場を見て考える、ということがやはり非常に重要ですね。
それでは、最後に今後取り込まれようとしているテーマについてお話し頂けますか。

三浦:当社は、この3年に2回の経営統合を経験する中で、各社の出身者が集まり、対話を通して経営理念や行動規範を作り上げてきました。そんな中で、カルチャーや行動規範を浸透させるために導入した表彰制度は、一定の成果をあげることができました。しかし、表彰のサイクルをもっと自然に大きく回していくためには、まだまだ課題があると感じています。また、現在のコロナ禍のもとで、オンラインやリモート環境により、「働きやすさ」を手に入れた方は多いと思います。その一方で、今後は、組織に属して働くことによる「働き甲斐」を感じる状態をどうやって作っていくのか、というのが最近のホットテーマです。現在は、オンラインの交流会などを通して、「ナナメの関係」を意図的に作りやすいように支援していますが、他に何ができるのか、引き続きチームの中でも議論をしていきます。

楠本:素晴らしいですね。私自身も大変勉強になりました。是非またお話を聞かせて下さい。本日は本当に有り難うございました。

 

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