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【徹底解説!】悩みの尽きない新規事業開発 ~優れた「仕組み」こそ、アイデアを生み出す原動力だ~

新規事業開発用バナー(楠本)

新規事業開発の成功には、優れた「仕組み」が必要

1.新しいアイデアが出てこないのは、これが要因だった

「自社の独自技術を用いて、売れる新製品を開発したい・・」
「スピード感を持ちつつ、社内でイノベーションを生み出したい・・」

このようなお悩みが貴社の社内でも出てきていないだろうか。
ほぼ全ての市場が成熟化しているとも言える今般、新製品/新サービス開発というテーマは、今や全ての業界、全ての企業にとっての共通テーマとなっている。ここ数年、その様なテーマに関する相談が本当に増えてきた。

成熟市場をブレークスルーする。そんな命題のもと、多くの企業は、社内で新しい製品/サービスのアイデアを生み出すべく、様々な取組みに着手している。例えば、アイデアの社内公募を実施したり、プロジェクトを立ち上げたり、専任チームを組成したり、様々なアプローチを展開している。

しかし、当該取組の運営側、そして参加者の努力むなしく、全く身にならない状態が続き、八方塞がりになってしまった・・という企業のお話も聞くことも少なくない。
その様な状況を多く俯瞰する中で、「失敗する共通要因」というものが見えてきた。ここで幾つかを紹介しよう。

失敗要因① いきなりアイデア検討に突入してしまう

これがケースとしては最も多いかもしれない。成果を急ぐあまり、いきなりアイデアの検討から入ってしまう、検討させてしまうという状況だ。

質の高いアイデアを出すためには、その発想のベースとなる「質の高い情報」のインプットが絶対に必要になる。情報を収集するという手間を惜しみ、最初からアイデアを考えようとすることが何故問題なのか。そのヒントは、ヨーゼフ・シュンペーター教授によるイノベーションの定義にある。

「イノベーションとは、経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」これがその定義。つまり、イノベーションの種となるアイデアは、突然ふっと出てくるのではなく、要素と要素の掛け合わせの中で、新しい価値を生む「新結合」ができるものなのである。

例えばある「技術」がお題なら、それと何を要素として組み合わせるかが重要となる。故に、アイデアを考えようとする際に、掛け合わせるための要素をできるだけ拡げることをやらなければ、既存の知識の狭い範囲内でしか組み合わせが生まれないことになり、何度検討しても同じようなアイデアしかでない・・という状況に陥る。

だからこそ、アイデアを検討する前に、個人として、検討チームとして、発想のベースとなる「情報の幅」をできるだけ拡げておく必要がある。

失敗要因② 初期のアイデア数が圧倒的に足りない

検討の初期段階で、そもそもの候補アイデアの数自体が少ないという状況は、失敗の可能性が高まる。どれだけ最初に、多くのアイデア素案を集めることができるかが成功の要諦。「量より質」ではなく、「量があるから質の高いものが選択できる」と考えるべきである。

筋悪なアイデアをいくら磨いても、筋悪なものにしかならない。磨けば光るアイデアというのは、最初から何か一つでも光っている部分があるもの。
「そりゃ多いに超したことはないが、それが出ないから苦労しているんだよ」という声もあるかもしれないが、出ない状況を自ら招いていることは大いにある。

例えば、「アイデア発想の与件がユルすぎる」というもの。人間とは、ある一定の制約要件があるほうが、発想が拡がると言われている。完全に自由に発想させることが、より多くのアイデアを生み出すかというと、実は逆。あまりにキツすぎる前提条件も問題だが、「何でもいい」からは、何にも生まれない。

また「最初から明細レベルの企画を求めている」というもの。アイデアの初期検討段階で、こんなことをやらせると、作成に時間が取られ、入りの数が極端に少なくなる。最初の段階なら、テキストのみ400~500字くらいで検討させるべきだ。更には失敗要因①でお伝えした「ヒントとなる情報が不足している」ことも、アイデアが出ない要因になり得るだろう。

HR Design Lab. 代表/博報堂コンサルティング 執行役員 楠本和矢

失敗要因③ 属人的な検討プロセスとなっている

社内におけるイノベーション創出プロセスで、よくあるのが「アイデアの発案者が、そのまま当該案の検討担当者になる」というもの。正しい進め方にも思えますが、これが失敗の要因になり得る。

自分が考えたアイデアを、自分で検討することになると、当然関与意識は高まるが、それが行き過ぎると、いつしか「その案を通すこと」自体が目的化してくる。そうなると、「この案は正しい」という思いが先行し過ぎ、リスクやネガティブな情報が顕在化しても、それを自然とシャットアウトしてしまいがちになる。結果、机上だけで纏めた現実性のないプランとなることに・・・。
これが生じるのは、「確証バイアス」という、自分がもともと有する考え方と一致する視点や、それを裏づける意見だけを探し、それだけに時間を費やしてしまうという人間の心理。こと新規事業開発に大変ありがちな状況である。

したがって、最初から1案に1担当者、という進め方ではなく、できるだけ複数の案を、複数人で議論しながら進めていくという方法を採るべきであろう。これも、失敗要因②が関連しており、最初の案が少ないからそうなってしまう。最初にできるだけ大量のアイデアを出し、自案云々から離れ、複数メンバーによる「客観的な比較」の中から、少しでも筋がいいアイデアを選ぶことが必要である。

2.アイデアを価値化していく、理想的なプロセスとは?

前述の様な「よくある失敗」を防ぎながら、アイデアを価値化していくための基本的なプロセスと、各段階における重要なポイントについて、一例を紹介する。(図表2)

(アイデア検討のステップ例)

≪Step1≫ アイデア創発に繋がる情報の収集

前述の通り、アイデアの質と量は、インプットする情報の質と量に確実に依存する。焦って、いきなりアイデアを考えようとしても、結局遠回りになってしまう。
ただ、闇雲に情報を集めればいいかというとそうではない。ここで徒に労力と時間を使いすぎてしまうと、最も重要な「アイデア創出」の部分に時間を割けなくなる。ここでは、次のアイデア創出ステップに上手く繋げるための、情報収集のポイントを解説しよう。

<ポイント1>
情報収集の「切り口」を見極める

情報が重要だからといって、何でもかんでも集めればいい訳ではない。先ず、アイデア創出にダイレクトにつながるような「情報収集の切り口」を最初に見極めることが必要だ。

以下、特に重要となる切り口を例示する。

(Ⅰ.自社の固有価値)
新ビジネスアイデア創出を目論んだ、情報収集の原点は「自社の固有価値」の棚卸しである。ここなくして、社内でオーソライズされるビジネスアイデアには繋がらない。その情報収集の切り口は、「顕在化価値」と「解釈的価値」の二つがある。

「顕在化価値」
● 人、モノ、情報、ネットワークなど、まさに価値として表出化しているものを指す。自社の企業内にはこれまで培ってきた情報や知識が数多くあるものの、組織が大きくなり、また縦割りの体制に変わるにつれ、情報が一所に集りにくくなる。このような取組を機に、一気に顕在化するだけでも大変価値がある。

「解釈的価値」
● 企業固有の「思想」や「歴史」の中から、そこに至る背景や想いを再度深く捉え、解釈的にブレイクダウンしていくことにより、実は気づかずに提供してきた価値、今後提供しうる価値を抽出でき、新製品/サービス開発の「芽」となるキーワードがみつかる可能性がある。これをシミュレーションで説明する。
● ある架空の金融機関が、「お客様を、お金の心配から解放する」というブランドコンセプトを掲げているとする。これを、解釈的に要素分解を進めていくと、新商品/サービスのアイデア一歩手前のキーワードが見えてくる。

(Ⅱ.未来の兆し)
日常何気なく触れている情報の中にも、これからの未来を予期するタネが潜んでいる。数ある情報の中から、自身の今までの経験に基づく感性に従い「未来の兆し」を見つけ出す。これが後に新たな創造を生む起点となる。

方法としては非常に簡単で、ネットや紙媒体をニュースソースに、「兆し」となり得るようなトピックと、その着眼理由について取り纏めていくだけだ。できれば、収集した「兆しトピック」の「着眼したポイント」や、別の見方について、メンバー間でディスカッションをする。そうすると、自分では気付かなかったポイントや解釈の仕方が見えてくる。この作業は、商品開発のタネとするだけでなく、メンバーに生活者視点のアンテナを立てて頂くためにも有用である。

(Ⅲ.カスタマーインサイト)
新製品/サービスアイデアの「ターゲット」となる生活者/業界について、関連領域において抱いている不満や、アンメットニーズなどをヒントとして探索し、それをキーワードとして抽出する。調査の方法は、テーマやターゲット、その時の制約要件等によって多種多様なアプローチがあり、ここでは、その方法論についてはあまり詳細に触れないが、基本的なインサイト探索の切り口のみ説明しよう。

「追憶」
● 当該カテゴリーの既存サービスや商品に関する捉え方(例:購買のトリガー、抱いている不満、アンメットニーズなど) について、記憶を辿る

「内省」
● 自分が気付いていない深層の捉え方(例:判断基準、購入時の気持ち など)を、深掘りの問いによって導きだす

「検証」
● ビジネスアイデア初期仮説に対する印象や、受容度について確認し、その理由から深層にある心理について引き出す

(Ⅳ.テクノロジー)
これからの新製品/サービス開発において、新テクノロジーを検討要素に入れないことはできない。世の中ですでに活用されている新しいテクノロジーや、3~5年後以内に活用が見込まれるテクノロジーについて具体事例を収集する。

ポイントは、各技術の「用途をキーワード化」する、ということ。テクノロジーのタイトルを見つめていても、発想が沸かないのは、それだけで「それが何を実現するものなのか?」を十分にイメージできないからだ。例えば、「IoT」についての用途は、様々な事例を収集すると、例えば

1. 目視で得ていた情報を、遠隔で取得・管理できる
2. 遠隔にあるモノに、データや画像を送信できる
3. 収集したデータを外部と連携させ、相互に活用できる
4. 収集した各種データを分析・処理し、状態把握ができる
5. モノに直接触れずに、デジタル端末で操作できる・・など

例えば、以上の様な加工ができるだろう。

(Ⅴ.ビジネスエッセンス)
新規事業にはこれまでにない新規性が必要なように思えるが、実際には、全くゼロの状態からだけではなく、様々な成功事例から「成功のエッセンス」を抽出し、転用したものも多くある。
様々な業界の新製品/サービス開発の成功例を収集し、その成功エッセンスを抽出したものを基点に、自社のビジネスになぞらえてみることで、アイデアが発想できる。詳しくは後述する。

<ポイント2>
収集した情報を「加工」する

折角、沢山の情報を収集したとしても、アイデア創出の際に、処理しきれなければ意味がない。集めて終わりとするのではなく、発想しやすくするための「加工」が必要である。

ここは一般的に抜けがちなポイントだ。
「テクノロジー」のパートでも伝えた通りだが、その加工方法とは「キーワード化」である。これは、どの様な収集情報についても必要な作業。分厚いレポートを収集し、読破したところで、すぐに頭から取り出せる状態にはなっていない。レポートを収集し、その中から、アイデア創出のINPUTとなりそうな情報に目を付け、できるだけ同じレベル感でキーワード化しておくと、後のアイデア創発作業で非常に効率よく進む。

<ポイント3>
フローから「ストック」へ

情報収集プロセスは、多くの労力が発生する故、できるだけ効率よく進めるべきである。
しかし、多くのケースで、それぞれ別の人間が同じ情報ソースを検索し、同じように纏めている・・という状況が生じていたりする。ストック型の進め方、つまり、一度集めた情報を「ディクショナリー」として蓄積、管理し、「組織知」として新製品/サービスを検討する人間が、いつでもそこから情報を引き出せるようにしておくということが重要だ。当然、情報には鮮度もあるので、情報収集の切り口ごとに「追加/更新」の運用ルールも決めておくべきである。

例えば、前述の切り口ならば、以下のような更新ペースが一つの目安になる。

(Ⅰ.自社の固有価値)
● 年に1回更新:そうそう変わるものでないので

(Ⅱ.未来の兆し)
● 毎回ごとに更新:「兆し」なので、当然最新の情報を追う必要がある

(Ⅲ.カスタマーインサイト)
● 半期に1回更新:企業ごとの戦略/取組方針などが出るペースに合わせて

(Ⅳ.テクノロジー)
● 四半期に1回更新:技術の転用事例なので、随時新しいものが出る可能性がある

(Ⅴ.ビジネスエッセンス)
● 半期に1回更新:「成功事例」が頻繁に出るわけではないので、MAXこれくらいで

≪Step2≫発想フレームを使ったアイデア創発

情報を収集/加工した後は、いよいよアイデアを創発していくステップに進む。
しかし、収集した情報を全て並列に頭にたたき込み、アイデアをひねり出すというのは現実的ではないだろう。作業に入る前に、情報を活かしきることのできる、効果的な発想の方法を考えるべきである。そして忘れてはいけないのが、アイデアの「磨き方」。アイデアは、生まれたままの状態では使い物にならない。ここでは、それらのポイントを解説する。

<ポイント1>インパクトとアナロジー

世の中には、アイデアを創出するための方法論は沢山あり、その時々で適切なもの、使いやすいものを使えばOKだが、ことビジネスアイデアの創出については、要素同士の組み合わせで考える「インパクト法」、及び成功エッセンスから類推して考える「アナロジー法」の2つが、最もシンプルで思考に没頭できる方法であり、先ずはこれらを活用すべきである。

(インパクト法)
要素と要素を掛け合わせることで、新しいアイデアを生み出す方法。このイメージを、先程説明した「情報収集の切り口」を使って説明しよう。

「Ⅰ 未来の兆し」×「Ⅰ 自社リソース」の掛け合わせ
● 「未来の兆し」には、テクノロジー情報や、アンメットニーズも含まれている。それに組み合わせる要素としては、「自社リソース」が最適。

「Ⅱ カスタマーインサイト」×「Ⅲ テクノロジー」
● 今まで対応できなかった「アンメットニーズ」を解決する突破口は、やはり新しいテクノロジーが最有力候補。「社内リソース」との組み合わせもあるが、前述の作業を経た状態で行うと、頭の中で考慮されることになる。

(アナロジー)
アナロジカル・シンキングとは、様々な成功事例から一般化可能な「成功のエッセンス」を抽出し、それらを自社リソースと掛け合せ、転用可能性を探り発想を拡げる手法だ。

思考のプロセスは、以下の3ステップ。
①発想のベースとなる個々の現象や事例から、
②それらを一般化して法則やパターンを見つけ、
③他分野に応用する一連の思考の流れを示す

「Ⅳ ビジネスエッセンス」からのアナロジカル・シンキング
● 他業界におけるビジネスの「成功のエッセンス」を元ネタとして、自社ビジネスへの転用可能性をアナロジカルに検討する方法

<ポイント2>練度を高めるための「問い」

最初に出したアイデアをそのままにしてはいけない。よりアイデアの魅力度を高め、且つ現実的なものにするために必要な作業とは、メンバー間での対話と、その中での適切な「問い」である。まさにこれこそが、組織やメンバー、そして自分の中にある「暗黙知」を引き出すための、唯一の方法であると言っても過言ではない。

(練度を高めるための「問い」)
「何がユニークなのか?」
● アイデアの新規性や独自性がないと競争力が生まれない。どこかに新規性や独自性があれば、アイデアを更に練り上げることで優位性を見出すことができる

「自社で行う必然性は?」
● どんなにユニークでも、自社で取組む必然性なくしては、事業化できない可能性がある。必然性が明確になれば、実現する上で大きな後押しとなる

「スケールが見込めるか?」
● 与件に照らし、現在のアイデアの事業規模をざっくり推定する。事業規模が大幅に見合わない場合、アイデアの再考判断も必要となる

「何故やりたいのか?」
● 最後は、推進役本人としての思い入れがどこまで持てるか。本当にピンときたアイデアは、本人の心に響いているはず

≪Step3≫アイデアの詳細化

「対話」を通じ、アイデアの練度を上げた後は、いよいよビジネスプランとして必要な要素を肉付けしていく作業だ。単に要素を追加していけばいい。というものではなく、各要素の関連性を意識し、そして要素毎のあらゆる可能性を意識しながら、正しい順番で検討を進めていく必要がある。「ビジネスアイデア」というなら、最低限ここまでは進めよう。プラニングフェーズはここまでで一段落。絞り込みの後は「実行」フェーズに移る。

<ポイント1>
「往来型プロセス」による検討

アイデアの詳細化に際しては、各要素を単体で考えるだけではいけない。それぞれの関係性や影響を意識しながら、要素間で「いったりきたりの検討」を繰り返し、それぞれが意味のある繫がりをもった形でまとめていく必要がある。

(ビジネスアイデア 詳細化フレーム)
こちらは、我々がよく活用する、ビジネスアイデアを詳細化するためのフレームワークである。骨子の部分から検討を始め、それぞれ隣接している要素に繫がりがあるかどうかを確認しながら、阻害要因の導出、精緻化要素の検討などと、順に検討を進めていく。

<ポイント2>
「阻害要因」の探索

「阻害要因」の探索とは、そのアイデアの実行に際し、ターゲットとする顧客や、社内関係各所が「動いてくれない」とするなら、その想定理由を深層的に探っていく作業である。各ステークホルダーの目線で、ホンネのレベルでどこまで「推論」できるかが重要だ。

(阻害要因の切り口例)
こちらは、ビジネスアイデアの阻害要因を検討する際に、発想のヒントとして活用する切り口集。勿論これが全ての阻害要因ではないが、全くの更地から検討するよりも効率良く進めることが出来る。

<ポイント3>
要素ごとの別オプション探索

例えば、「マネタイズ法」や「社外リソースの活用法」など、アイデアの詳細化に必要な各要素について、当初想定していた方法とは別に、それぞれどの様な別の方法があるかについて、徹底的に掘り下げて、アイデアの練度を上げていくことにも挑戦すべきである。

(別オプション探索の切り口例)
こちらは、マネタイズ法の別オプションを検討するための切り口集。このような、各要素について、他の可能性を探るための切り口というものが全て存在する。これも、効率良く検討を進めるための一つの仕組みである。

3.イノベーションを導くあなたが持つべきマインド「3つのR」

以上、社内で新しいアイデアを「価値化」していくための、基本的なプロセスについて例示してきたが如何だっただろうか。このテーマに「絶対善的な進め方」はない。取組みの目的や、貴社内の様々な制約要件を踏まえ、進め方を熟慮しアレンジしていくことが必要だ。

最後に、イノベーションを牽引するリーダーやメンバーに、是非持ってもらいたいマインドを3つ伝えて、締めくくりとする。これらは、私たちHR Design Lab.が多くの「新規事業開発」に関連するプロジェクトを手掛け、多くのリーダーやメンバーとご一緒してきた中で、実感値として得たものだ。名付けて「3つのR」である。

①健全な現状否定:Reflection

自ら決めたこと、取り組んできたことを、自分で否定することは心情的に難しいことはわかるが、自身がバイアスフリーの姿勢をみせ、進んで「健全なる自己否定」を実施しないと、是々非々の議論が生まれず、新しい価値の創出は起こらない。前述の「阻害要因分析」とは、まさにその様な検討を行うための仕組みそのものだが、そこに限らず、常に「確証バイアス」に陥らないよう、その姿勢を保つべきである。

②大体合ってれば次へ:Roughly Right

新規事業開発とは、「未踏の領域」に踏み込むこと。その取組みの成功確率を事前に証明することは不可能だ。故に、特に検討の最初の段階で、詳細仕様を固めろとか、成功確率を判断せよとか、そんなことをしていても永遠に具体化していかない。「何かあれば常に立ち戻る」ということを大前提に、大まかに合っていれば一旦GO、というスタンスで、進めるところは大胆に進めていこう。

③些末毎で折れない:Resilience

「レジリエンス」とは、「困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力」。
新規事業開発とは、未知なる事実を探索していくプロセス。早い段階で多くの案が必ず脱落し、予期しなかったやっかいな情報にも必ず出くわすもの。当該テーマにおいては、長いプロセスの中で必ず挫折がある。そういうものだとわかった上で、どんな不測の状況に陥ったとしても、悠々と進める心構えが必要だ。

4.最後に

イノベーションの研究における第一人者、クレイトン・クリステンセンは、「イノベーションに必要な資質は後天的に育成可能である」という研究結果を明らかにした。彼曰く、イノベーションが生まれない問題は、人材の問題ではなく、ほぼ誰もが、十分な訓練によって有能なイノベーターになれるということだ。
これについては、現場でコンサルティングをしてきた私たちとしても、全く同じ見解である。

昨今多くの企業から聞こえてくるのは、現場から知恵が出ない、人や組織を動かせる人材がいないとの声。しかし、それは本当に「人」の問題だろうか。
ここで私たちは、ある問いを立てたい。組織として、現場の社員に真に備わるスキルや暗黙知を引き出すための「仕組み」を、本当に提供できているのか否か。それが出来ていないとするならば、それこそまさに、企業としての最大の機会損失だとは言えないだろうか。

然るべき 「場面」と「仕組み」 こそが人を育て、そしてそこからイノベーションが生まれる。そんな見方もあっていいのではないだろうか。

profile:
楠本和矢(くすもと かずや)

HR Design Lab.代表 兼 株式会社博報堂コンサルティング執行役員。
プロフェッショナルファシリテーター、ファシリテーター内製化コンサルタント、作家。
神戸大学経営学部卒。ファシリテーションを中心とした数多くの企業内研修や、クライアント企業内プロジェクトのファシリテーション業務も数多く担当するなど、名実ともに、日本トップクラスのファシリテーターという評価を得ている。
現在は、生産性向上、ファシリテーションをテーマとした各種講演や、多くのクライアント企業における人材育成のサポートと、実践知に基づく人材育成プログラム開発に注力。
主な著書に『会議の生産性を高める 実践パワーファシリテーション』『人と組織を効果的に動かすKPIマネジメント』『龍馬プロジェクト―日本を元気にする18人の志士たち』『サービス・ブランディング』など。

※本コラムはHR Design Lab.代表楠本和矢の外部取材記事を一部編集したものです

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